料理に使う酒の選び方|種類や風味、使い分けを徹底解説!初心者でもわかるおすすめの選び方

調味料として日本酒を使う場合、料理酒を使う方は多いかもしれません。

しかし、料理本のレシピに載っている「酒」とは、

料理酒ではなく日本酒を指していることが多いということはご存知でしょうか?

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①日本酒と料理酒の違い

料理酒とは、料理に使用するために調合された日本酒のことです。

料理に旨味やコクを与えるために作られているもので、

食塩をはじめ、お酢や甘味料が添加されているものもあります。

添加されている食塩は、お酒に対しておよそ2~3%の割合で入っており、

海水に近い塩分濃度になります。

これだけ塩分が含まれていると、

調味料として料理に入れすぎると塩っ辛い味になってしまいますよね。

レシピ本などに調味料として

「料理酒」と書かれている場合はそのままの分量でOKですが、

「酒」と書かれている場合は料理酒ではなく日本酒のことを指しているので、

日本酒の代わりに料理酒を使う場合は、塩分を他の調味料で調整する必要があります

料理酒に食塩を添加する理由としては、

酒税法上お酒ではないことにして酒税の課税対象から外すためです。

食塩を添加しお酒として飲めなくすることで、酒税の対象外にし、

その分安く販売することができるのです。

また、

料理用の酒でも塩などが添加されていない「料理用の清酒」というものもあります。

これは、精米歩合や製造方法を工夫してコクや旨味を残し、料理向きにした日本酒です。

料理用の清酒の場合は食塩が入っていないので酒税の課税対象となり、

料理酒よりは若干値段が高くなります。

料理に使う日本酒は、やはり添加物の入っていない純米酒が一番おすすめです。

料理酒は価格的に安価で手に入れやすいですが、

塩分濃度が高いことや、甘味料などの添加物が入っているものもあるので、

それを考えるとできれば避けたいところです。

また、料理用の清酒もいいですが、

料理用の清酒でも「醸造アルコール」が入っていない「純米料理酒」であれば

良いかと思います。

醸造アルコールは、トウモロコシを原料にした蒸留酒です。

蒸留酒は料理の仕上がりを硬めにするので、

醸造アルコールが入っていない純米酒を使ったほうが、

煮込みなどは柔らかく仕上がります。

料理には純米酒がおすすめなのですが、

だからといって高い日本酒を使えば料理が美味しく仕上がるというわけではありません。

たとえば日本酒には、吟醸酒とか大吟醸酒というものがありますが、

これは飲むにはとても美味しいお酒で、

製造方法の複雑さや精密さからお値段が高い高級酒です。

しかし、

吟醸酒は日本酒にとっては雑味となる「旨味」をとるために

原料の米をたくさん削っています。

米をたくさん削る(精米歩合が高い)ことで日本酒は美味しくなりますが、

料理に使うとなると話は別です。

料理に吟醸酒のような高級酒を使うと、

旨味を添加するという役割が果たせなくなってしまうのです。

ですので、料理に使う酒は精米歩合の低い「純米酒」または料理用に造られた

「純米料理酒」がおススメです。

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②日本酒の調理効果

味をしみ込みやすくする


アルコールには高い浸透性があるため、

煮物などを作る時に初めにお酒を入れると、食材に味がしみ込みやすくなります。

臭みをとる


魚介類の臭み成分であるアミンは揮発性で、

日本酒の持つ揮発性カルボニル化合物と反応して臭みを取ります。

素材をやわらかくする


アルコールの作用により肉の筋繊維の保水性が高まり、

柔らかく仕上げることができます。

焼き色と香りをつける


日本酒に含まれるアミノ酸や糖分は、加熱によりアミノカルボニル反応を起こし、

美しい焼き色や香ばしい香りをつけます。

魚を焼く前に日本酒を一振りすると臭みが取れ、

良い焼き色がついて香ばしく仕上がります。

隠し味や旨味をプラスする


日本酒のエキス分に含まれる糖分やアミノ酸によって、

料理に甘味や旨味がつきます。

日本酒には旨味成分のグルタミン酸が多く含まれているので、

かつおだしと一緒に使うことによってイノシン酸との相乗効果で旨味が増します。

煮崩れを防ぐ


日本酒のアルコール成分がペクチンを強化する働きがあるので、

細胞壁が壊れるのを防いで細胞の中からでんぷんやたんぱく質が溶出するのを防ぐので、

煮崩れを防止する効果があります。

③日本酒の分類

料理には純米酒を使うのがおすすめであること、

日本酒の調理効果について理解したところで、

ここからは調味料としての酒という話ではなく、日本が誇る素晴らしいお酒である、

飲むための「日本酒」についてのお話をしていきます。

まずは日本酒の分類です。

  • 吟醸酒


精米歩合60%以下。低温でじっくり吟味して醸造される、吟醸造りの酒です。

吟醸香と呼ばれる華やかな香りと、透明感のある味わいが特徴。

  • 純米酒


精米歩合についての規制は現在は無い。

米と米麹のみで造られた、醸造アルコールが添加されていない酒。

  • 本醸造酒


精米歩合70%以下。

米と米麹、醸造アルコールが使われている酒。

醸造アルコールの使用量は、米の総重量の約1%までとされている。

日本酒の「特定名称酒」には、上記の吟醸酒、純米酒、本醸造酒の3種類があります。

その中でもさらに、

・純米酒

・特別純米酒

・純米吟醸酒

・純米大吟醸酒

・吟醸酒

・大吟醸酒

・本醸造酒・特別本醸造酒

の8つに分類されます。

特別純米酒とは、

純米酒の基準を満たしたうえで、

精米歩合を60%以下にする

もしくは特別な製造方法であるものに許可されている名称です。

特別本醸造酒も同じです。

細かくてわかりずらい分類になっていますが、

例えば、純米酒と純米吟醸酒は原料も精米歩合も全く同じという場合もあります。

その場合は、条件を満たしていれば、

どの名称を選ぶかは酒蔵の判断にゆだねられています。

醸造アルコールが添加されていないものが「純米酒」、

精米歩合が60%以下のものが「吟醸酒」。

という基本だけ分かれば、

あとは色々と条件によって変わってくると思っていればよさそうです。

ちなみに精米歩合とは、米がどれだけ削られているかを数値で表したものであり、

精米歩合が高いほど米をたくさん削っているということになります。

(例えば、精米歩合40%のお酒は、原料の米粒を60%削っているということ。)

米は、周りを削って中心にいくほど香りが高くなります。

タンパク質や脂肪などの酒の雑味の原因になる成分が多い外側を削り、

心白と呼ばれる米の中心部を使うことで、雑味のない酒を造ることができるため、

日本酒造りには精米という作業がとても大切なのです。

そんなに削ってもったいない!

と思うかもしれませんが、削られた米は「米粉」として販売されるなど、

有効活用されています。

また、米をたくさん削るのには高い技術が必要になるため、

精米歩合が高い酒のほうが高価になります。

④日本酒の製造工程

精米・洗米・浸漬

まずは、雑味の原因となる外側の糠部分を削る作業から。

通常、食べるための米は90%ほどの精米歩合ですが、

酒用の米は70~50%削るのが一般的です。

精米した米の表面に残った糠を取り除くために洗米し、

洗米が終わった米は一定の時間冷たい水に漬けて水分を含ませる(浸漬)。

米の品種や精米歩合によって浸漬時間は秒単位で変わるので、

浸漬はとても繊細な作業です。

蒸米

浸漬した米は、甑(こしき)という大きな蒸籠に入れて蒸します。

水を張った釜の上に甑を乗せて米を入れ、釜を熱して蒸気を送ります。

約1時間ほど蒸し、蒸し終わった米は甑から出して冷却します。

蒸し米は、麹に使われるものと仕込に使われるものに分けられ、

それぞれ麹室や酒母室に運ばれます。

酒の仕込の過程において蒸し米はたくさんの工程で使用するため、

蒸米の作業が行われるのは合計8回にのぼります。

日本酒造りにおいて、米を炊くのではなく蒸すのは、

米のデンプンをα化して糖化しやすいようにするためです。

また、米を加熱によって完全に殺菌するためや、

米の外側は硬くさらさらで米同士がくっつかないようにし、

中心部は柔らかく水分がある状態にするためでもあります。

製麹

蒸し米に麹菌を振りかけて繁殖させ、麹を造ります。

麹を造ることを製麹(せいきく)と言います。

米はデンプン質で糖分を含んでいないので、

そのままでは酵母によるアルコール発酵ができません。

これを麹が出す酵素の力で分解(糖化)させます。

また、麹は酵母の栄養となるビタミン類を生成したり、

アミノ酸などを生成することによって、酒の風味を豊かにする役割りがあります。

麹は、酒母にも醪にも使われるもので、麹造りは酒造りの肝となる工程です。

麹造り専用の部屋である「麹室」は、温度が約30℃、湿度は約60%に保たれており、

条件により微調整されます。

蒸し米に「種麹」をふりかけ良く混ぜ込み(床もみ)

まとめて積み上げて布をかけて保温します。

10時間ほど置くと蒸し米が固まりになるので、

一度ほぐして、またまとめて保温する(もみ上げ→切り返し)

1日経って麹菌が繁殖してきたら、

「麹蓋」という小さな木の箱小分けして入れます(盛り)

そして、麹の温度が上がりすぎるのを防ぐために、かき回したり広げたり、

麹蓋の場所を入れ替えたりし、均一に繁殖するようにします(手入れ・積み替え)

できあがった麹は麹室から出し、乾燥した部屋で寝かせます(出麹→枯らし)

麹造りは、全行程で3日間を要します。

酒母(酛)

酒母(しゅぼ)は、蒸し米、水、麹に酵母を加えて造られる、

酵母を大量に培養した酒造りの発酵の元となるものです。

酛(もと)とも呼ばれ、速醸系と、生酛・山廃系があります

酵母が順調に活動するには、雑菌などの侵入を防ぐ酸が必要です。

その酸を自然界にいる乳酸菌にまかせてつくる酒母が「生酛系」で、

人工的に乳酸菌を添加する簡易的な方法が「速醸系」です。

生酛系は酒母ができあがるまでに約30日かかりますが、

速醸系は約15日で造ることができます。

生酛系酒母には、「生酛」「山廃酛」があります。

生酛は仕込み時に酛すりと言われる、櫂で蒸し米と麹をすりつぶす作業があり、

酛すりは山卸とも呼ばれます。

この山卸の作業をせずに酒母を仕込む方法を、山廃酛といいます。

仕込み・醪

日本酒は、1本仕込みを3段階・4日に分けて行う、

3段仕込みと言われる方法で仕込みが行われます。

1日目、桶(添えタンク)に酒母と麹、水、蒸し米を入れ混ぜる(添え)

2日目は酵母の増殖を進めるため、さわらない(踊り)

3日目、発酵タンクに移し替えて、麹、蒸し米、水をさらに加える(仲)

4日目、さらに麹、蒸し米、水を加える(留)

初めは少量を仕込み、段階的に量を増やして仕込んでいきます。

これは常に酵母がいっぱいの状態にし、ほかの雑菌の繁殖を防ぐためです。

3回に分けて仕込まれた醪(もろみ)は、

目標とする酒質になるまで約3~4週間かけて発酵させます。

上槽・火入れ・貯蔵

醪は最終的に、白く濁った濁り酒のようなものになります。

これをしぼることを上槽と言い、上槽することで清酒になります。

横方向から圧力をかける「自動圧濾圧搾機」などでしぼられることが多いですが、

吟醸酒や大吟醸酒などの高級酒は、

「槽(ふね)」という上方向から圧力をかける長方形の容器も使われます。

醪をしぼるタイミングは、醪の表面に泡がない状態になったころですが、

いつしぼるかは、糖化や発酵やアルコールの濃度などの具合を、

杜氏が目で見てベストなタイミングでしぼります。

上槽をする日をいつにするかを見極めるのが、杜氏の腕の見せどころというわけです。(杜氏とは、その蔵の酒造りの責任者のこと)

しぼりたての原酒はまだ濁っている状態なので、
10日ほど寝かせて細かい固形物を沈殿させてから上澄みを取り出します(おり引き)

おり引きした後さらに活性炭などで濾過されます。

その後、酵素や酵母などの微生物の活動と止めて酒質を安定させるためと、

殺菌をするために火入れをします。

火入れが終わった酒は、蔵で貯蔵されて夏を越します。

秋以降、アルコールの度数を調整するために水を加えて、

再度火入れし、瓶詰めして出荷されます。

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⑤まとめ

日本酒って、本当に奥が深いですよね。

昔は日本酒というとオジサンが飲むイメージでしたが、

今ではオシャレな感覚で若い女性にも人気が高いお酒になりました。

しかし、日本酒をよく飲む人でも、

日本酒の作られ方を詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。

いろんな微生物の働きによって、人間の知恵と工夫と手間によって、

米だけを原料にあんなに色々な種類の日本酒ができるって、すごい事だと思います。

日本酒の造られ方や、作り手の方の思いなどを知ると、

より日本酒を楽しむことができますよね。

飲んで良し、料理に使って良し、化粧水にしても良し!

酒粕を含め、日本酒は何気に用途が幅広いです。

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